小学校低学年の時だっただろうか
詩の宿題が出た
ベランダでキラキラ光る給水塔を眺めながら
思い浮かんだ言葉を並べた
猫 青空 風 キャンディ ・・・
好きなものを気持ち良いリズムで
パズルのようにはめ込んでゆく
何て自由で楽しいのだろう
幸せだった
時間を忘れて書き続けた
太陽は街を墨色に塗り替えて
姿を消そうとしていた
台所から心地よい音が響く
味噌汁の匂いが鼻をくすぐる
お腹空いたな
最後のピースを置いた
素敵な世界が出来た
「本当に自分で書いたのか」
なぜこんな事を聞くのか
聞かれなくてはならないのか
宿題だったが楽しく書いたのだ
市のコンクールに出すのだけど
あなたのは出さないからね
それでいいね いいわね
気の弱かった私は頷くのが精一杯だった
下を向いたまま突っ立っている少女を
そっと抱きしめる
あの時
何て答えればよかったのだろう
わからない